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第9回リュウを包み込む人々

 ある日、夫が言いました。「楓のコラムずっと読んでいるのだけど、これじゃ俺、何もしていないみたいじゃん」...えっと、そんなことはないです。あくまでも私の視点から書いているので、これまでに登場してないだけなんですけど。。。。
 リュウは周りの人にとても恵まれています。家族のほかにも、夫の両親、従兄妹、地域の人々等々。あたたかい愛情に包まれてすくすくと育っています。今回は、夫をはじめ、リュウの成長を見守ってくれている人とのエピソードを綴っていきたいと思います。

 障がいがあるかもと思いはじめた時から、夫は「リュウはリュウだから」というスタンスでした。私はというと、「1年分くらい遅れています」という判定を聞いて、「1歳分の遅れを取り戻さないといけない」という焦る気持ちが常にありました。療育の他に習い事(スイミングと学習塾)に通っていました。しかし、療育でも習い事でもリュウの落ち着きのなさに振り回されたり、暗に成長の遅れを指摘されたりすると、どうしようもなく悲しくなりリュウに八つ当たりする日々を過ごしていました。リュウはその度に涙を流していました。私自身に刷り込まれた考え方、遠慮深さが美徳とされる日本文化の象徴としてよく言われる「自分のことを必要以上に卑下したり、人と比べてしまう習性」が私を苦しめていました。私がリュウに辛く当たる時は、たいていリュウを他の子と比べて遅れているなと感じた時でした。

 そんな時、夫は「リュウはリュウだから」とリュウのありのままを包み込んでいました。深い愛情から出る一言であることは頭で理解しつつも、「それはわかるけど、療育に立ち会うことも習い事に付き添うこともないからそんなに冷静でいられるのよ。しかも、私は育児休業をとって仕事を一時中断している。あなたは違うでしょう?」という気持ちが私の中に渦巻いていました。夫に育児休業を取得してほしいとお願いしたことも何度もあります。でも、育児休業を取得できるような職場の雰囲気ではなく、実現することはありませんでした。この夫に対する複雑な気持ちは育児休業中消えることなく、何度も夫とぶつかり合いました。激しい喧嘩をして何日も口をきかなかったり、お互いに辛かった時もありました。

 「リュウはリュウだから」と包み込む夫は、リュウには心地良く、夫にとてもなつくようになりました。その夫の言葉や姿勢から、のちに気づかされたことがあります。それは、私が良かれと思ってリュウに何かをやらせても、人と比べて落ち込むのであれば意味がないのではないかと。それからは、私自身、無理をすることが減りました。リュウが楽しくなさそうな習い事や、一緒にいて気持ちが疲れる方とは距離を置くことにしました。どうしてもリュウの付き添いがキツイ時には、時間の許す限り夫に頼みました。

 私はリュウと少し距離をとることによってリュウを客観的に見れるようになりました。リュウだって普通の子どもと変わらないところがある。そう思うと楽な気持ちでリュウに接することができるようになりました。もし、夫が私と同じような考え方だったらリュウを含め家族はどうなっていたでしょうか。世間体ばかりに気を取られ、リュウの気持ちに寄り添うことなく高度なことばかりを求め、勝手に失望していたかもしれません。私だけがリュウを背負うのではなくいろんな人にリュウのことを見守ってもらうことにしました。

 幸いなことに義理の両親が隣に住んでいるので、リュウは自由に行き来する毎日です。特におばあちゃんは優しいので、リュウにとって癒しの存在です。おばあちゃんの家はクールダウンスペースのようなものですね。我が家はリュウの下にハルや珠子がいるので、リュウばかりに構っていられません。そんな時祖父母の存在はとてもありがたく感じます。時々、リュウの障がいについて必要以上に心配しすぎることもありますが...。

 義理の姉も障がいについて詳しいわけではありませんが、リュウの扱いが上手です。義姉の子どもたち(リュウのいとこ)も、リュウのことを馬鹿にしたりすることはありません。ともすると、リュウは独特の世界を持っているので同じ世代の子どもにからかわれることがあるのですが、彼らは全くそんなそぶりを見せずリュウと仲良く遊びます。日常的にいとこと遊ぶことも多いので、リュウの社会性にいい影響を与えてくれているようです。

 弟のハルや妹の珠子も自然にリュウに接しています。下二人はまだ小さいですが、リュウととても仲良しです。下二人と過ごしている時のリュウはとても優しく、本当に高機能自閉症なのだろうか?と思う時もあるほどです。親バカな私からみれば、我が家の子どもたちはすくすく素直に育っている、そう思うのです。それは、リュウを丸ごと受け入れることができる夫の影響が大きいかも。何でも一所懸命やってしまう「私」と、客観的に冷静に物事を受け入れられる「夫」のバランスが取れているのだと思います。

 私の実の親や兄は、数年経った今でも、リュウの障がいについて理解が追いついていないようです。今でも「私が甘やかして育てたから」だと思っています。理解してもらうのは難しいと感じて、今はあえて障がいについて話すことはありません。でも、孫の一人として可愛がってくれています。それだけでいいかなと思っています。世の中すべての人が障がいを理解してくれるわけではなく、様々なとらえ方があるということを教えてくれているのかもしません。

 リュウを育てることで、今までの価値観がガラッと変わりました。「あるがままでいいんだ」ということが、生きていく上でとても気持ちのいいことなのだと気づかされました。このことが私の人生に変革をもたらしました。

 この文章を書いている最中、リュウはいつものように絵を書いていました。ボールペンでひたすら列車などを書くのがブームなのですが、この日はクレヨンを持ち出してきて、なにやら黙々と書いているのでそっとしていました。しばらくして、リュウが「できたよ」と絵を持ってきました。


draw1.jpg

 「ありがとう」なんてめったに言わないリュウからの「ありがとう」。こんなに嬉しい言葉をリュウに自然にかけてもらえるようになる日が来るとは思いませんでした。

 まだ小さかった3歳の時、療育センターの門をくぐった日から、将来に対する不安に押しつぶされそうな気持ちをずっと抱えて過ごしてきました。ちょっと楽になったかなと思ったころに、また問題が出てきたり、同年齢の子どもたちとの違いを目の当たりにして落ち込んだりを繰り返してきました。 最近は、成長したリュウの心配ごとは減り、少しずつ手がかからなくなりつつある中でのプレゼント。私も「ありがとう」とリュウの頭を撫でましたが、感覚過敏のリュウから照れくさそうに手を払われてしまいました。私は、心の中でギュッとリュウを抱きしめました。

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